【新事例】カスハラと自殺の因果関係を認めて労災認定<社労士執筆>
柏労働基準監督署は、2023年10月、住宅メーカーで販売を担当していた20代男性社員(A氏)が自殺したのは、客からのカスタマーハラスメント(カスハラ)などが原因だったとして、労災認定を行いました。カスハラは、2023年9月、厚生労働省が「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を改正した際に、考慮するべき類型に加えられています。
労災認定の背景
・2019年4月から、A氏は千葉県内の住宅展示場で、注文住宅の営業として働いていた。
・2020年2月、A氏が新築中の顧客に追加費用を求めたことで関係が悪化し、顧客から度々、叱責を受けるようになった。顧客が激しく詰問する音声が、A氏の携帯電話に残っていた。
・2020年8月、A氏が社員寮で自殺。入社2年目で24歳だった。
・2022年2月、A氏の遺族が労災申請。
・2023年10月、柏労働基準監督署が労災認定を行った。
「精神障害の労災認定基準」にカスハラが追加
厚生労働省は、労災認定の指針として「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を公表しています。この中では、「達成困難なノルマを課された」や「仕事内容に大きな変化が生じた」など、心理的負荷を伴う具体例が示されています。2023年9月には、新たに「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という項目が追加されました。
また、顧客関連の心理的負荷に関していうと、上記の新設された「27」番以外に、既存のものとして「9」番があります。ここには「顧客や取引先から対応が困難な注文や要求等を受けた」と記載されています。今回の柏労働基準監督署の例は、これらの「強」に該当するレベルであったと考えられます。
まとめ
職場における「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が注目を集め始めたのは、ここ数年のことです。厚生労働省が、労災の認定基準に「カスハラ」を加えたことで、企業の「カスハラ」に対する姿勢が一転したように思います。鉄道会社や航空会社も、カスハラに対するステートメントを発表し、対策に乗り出しています。過度なカスハラには個人で対応するのではなく、管理職も含めた会社全体で対応していく時代になっていくのかもしれません。
※参考/厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf
※参考/厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34888.html