【データ】GAFAも選んだ「合同会社」が増加中<社労士執筆>
GoogleやAmazon、Appleの日本法人が採用していることもあり、どこか外資の香りがする「合同会社」。法人格として一般的な「株式会社」と異なり、設立が容易であることから、採用される例が増えているそうです。そこで今回は、「合同会社」の設立数の変化をデータで見てみることにしました。データソースは、政府統計ポータルサイト「e-Stat」です。
「合同会社」の設立数は、2006年と比べて約12倍に増加!
「e-Stat」内にある「登記統計 商業・法人 」統計によると、2006年における「合同会社」の設立数はわずか3392社にすぎませんでした。そこから年々増加の一途をたどり、直近の2023年では40,751社にまで増加しています。ここから、18年間で12倍にも増えたことが分かります。なお、2023年時点における「合同会社」の総数は、115,190社だそうです。
そもそも「合同会社」という法人格は、2006年5月1日に施行された新会社法により誕生したもの。新会社法の導入により、従来の「有限会社」は新規設立ができなくなり、「合同会社」がその代替として位置づけられました。この改正により、設立手続きが簡素で柔軟な経営が可能な「合同会社」が、中小企業やスタートアップ、外資系企業にとって魅力的な選択肢となっていったそうです。
では、「合同会社」と「株式会社」には、どのような違いがあるのでしょうか。
「合同会社」と「株式会社」の相違点
「合同会社」と「株式会社」の相違点をまとめると、以下のようになります。
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
設立手続き | ・定款認証が不要(作成は必要)※ 比較的簡単で費用が安い | ・定款認証が必要 手続きが複雑で費用がかかる |
会社の所有者 | ・社員(出資者) | ・株主 |
会社の経営者 | ・社員(出資者)自身が経営 所有と経営の一致、柔軟な経営が可能 | ・取締役会が経営 所有と経営が分離、厳格なガバナンスが必要 |
意思決定 | ・全社員の同意(株主総会の開催はなし) | ・株主総会 |
決算公告 | ・決算書の公告義務なし | ・決算書の公告義務あり |
利益配分 | ・柔軟に決定可能 | ・原則として出資比率に応じる |
信頼性 | ・株式会社より低いが、高まる傾向にある | ・信頼性が高く、大企業に多い |
資金調達 | ・借入、少人数私募債など手段は少なめ | ・株式の発行、社債の発行、借入など手段は多め |
こうした相違点を見比べると、「合同会社」の大きなメリットは、「株式会社」よりも手軽に設立・運営できる点だと考えられます。経営と所有が分離しない点も魅力的です。一方で「株式会社」よりも信頼性の弱い点がデメリットだとされてきました。
しかし、合理性を追求するGAFAなどの外資系大手や、西友・DMM.comといった国内大手も、「合同会社」を選びはじめたことで、信頼性も高まりはじめているのではないかと推察します。
それほど大きな資金を必要とせず、規模拡大も目指さないスモールビジネスであれば、「合同会社」は最適な法人格になりうるでしょう。これからも、「合同会社」の設立数は伸びていくのではないでしょうか。