【重要判例】『内々定の法的性質と信義則』―コーセーアールイー事件(高裁2011年2月16日判決)

事件のサマリー
この事件は、不動産売買等を業とするY社から採用の「内々定」を得ていた男子学生Xが、内定通知書授与予定日の数日前に突然、その企業から内々定を取り消されたことに起因します。
学生Xは、内々定の取り消しが違法であるとして、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を求めて訴訟を提起しました。
第一審の福岡地裁は、学生Xの請求を一部認容しました。その後、企業側は控訴。福岡高裁は内々定によって労働契約が成立したわけではないとしつつも、男性Xの期待権を侵害したとして、慰謝料の支払いを命じました。
判決のポイント
●「内々定」では労働契約は成立していない
内々定は、企業と学生との間に労働契約が成立した状態を指すものではなく、正式な内定までの間に新卒者が他の企業に流れることを防止することを目的とする事実上のものであって、直接的かつ確定的な法的効果を伴わないものとされました。
●一方で、学生の期待権は保護されるべき
内々定の段階では労働契約が成立していないとされるものの、一方で採用内定通知書の授与予定日が定まっており、そのわずか数日前に内々定が取り消されたことから、学生の採用への期待は法的保護に値する程度に高まっていたと認定されました。この期待権の侵害が不法行為(信義則違反)に該当するとされました。
踏まえての留意点
●内々定の取り扱いに関する明確な説明
企業は、内々定が法的効力を持たないこと、あるいは採用の確約ではないことを学生に対して説明し、誤解を招かないようにする必要があります。内々定の取り消しが学生の期待権を侵害しないよう、慎重な対応が求められます。
●内々定の取り消し時には誠実に対応
仮に内々定の取り消しを行う場合、企業は学生に対して誠実な対応と説明を行うべきです。また、内々定を取り消す可能性があるにも関わらず、それを内定日の直前まで知らせない行為は、信義則に反する行為として慰謝料の対象となる可能性があります。
出典
・事件名:損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件(コーセーアールイー事件)
・裁判所:福岡高等裁判所
・判決日:平成23年2月16日 (2011年2月16日)
・参照法条:労働契約法第6条「労働契約の成立(※)」、民法第709条「不法行為(※)」、民法第1条「信義則(※)」
・裁判所の判決文:https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/08850.html


