【重要判例】『労災保険と会社行事の業務遂行性』―国・行橋労基署長事件(最高裁2016年7月8日判決)

事件のサマリー
この事件は、会社の歓送迎会に参加した従業員が、終了後に中国人研修生を送った帰社途中で事故死した事案です。歓送迎会へは欠席すると伝えていたそうですが、「顔を出せるなら、出してくれないか」と言われたため、業務の合間をぬって参加しています。また、事故は社用車で起こっています。
これを受け、遺族は労基署長に対し、労災給付を請求しましたが、労基署は「業務外」として不支給処分としました。そこで、遺族は処分取り消しを求めて裁判所に提訴しています。
一審・二審は、歓送迎会は私的な会合であり、会社の支配下になかったとして、遺族の請求を棄却。最高裁は「上司の要請により参加せざるを得なかった」「会社の行事として企画・費用負担があった」「帰社途中の事故であった」などの点を踏まえ、実質的に会社の支配下にあったとして業務上災害と認めました。つまり、遺族側が勝訴しています。
判決のポイント
📌実質的強制性の有無
形式上は任意参加でも、上司の強い要請や業務との関連から断れない状況にあれば、会社の支配下にあると判断されます。今回は、業務を一時中断してまで参加を求められた経緯が重視されました。
📌行事の業務関連性
歓送迎会が会社の中国人研修生受け入れに直結しており、費用も会社が負担していました。親睦目的にとどまらず、会社活動の一環と認められる点が、業務性を裏付けました。
📌事故行為との因果関係
送迎や帰社行為は行事と一体の行動とされ、地理的・時間的にも大きな逸脱がなかったため、事故との因果関係が肯定されました。
出典
・事件名: 平成26(行ヒ)494 遺族補償給付等不支給処分取消請求事件
・裁判所:最高裁判所 第二小法廷
・判決日:平成28年7月8日(2016年7月8日)
・参照法条:労災保険法1条・12条の8第2項、労基法79条・80条
・裁判所判決文:https://www.courts.go.jp/hanrei/86000/detail2/index.html


